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仕立て屋の恋 54

多分、あれは5歳になってすぐのころだろうと思う。

祖父に連れられて店に来ていた僕は、工房で一人で絵をかいていた。

すると鈴が鳴って、お客さんが入ってきたのを感じた。

普段はかつかつと革靴の音がするのがほとんどなんだけれど

その時はパタパタと小さな靴の音がした。

僕は椅子をトン、とおりて店のほうを恐る恐る覗いてみた。

そこにはお客さんの男性が小さな男の子の手を引いて立っていた。

僕が顔をのぞかせているのに気が付いたその子はにっこりして手を振った。

僕は祖父の背中に隠れてしまったが、祖父が「お前と同じくらいの年だよ。

隠れてないで挨拶なさい」と笑って僕を前にやった。

「シム・チャンミンです。5歳です。」ぺこりと頭をさげるとその子は

「俺、ユンホ。7歳。この店いいな!俺、よくじいちゃんにつれてきてもらうんだけど

ここ、かっこいいな。」といってニコニコして手を差し出した。

僕らはすぐに仲良くなって、工房で書いていた絵をみせに二人で工房に入ってしばらくあそんだ。

祖父がケーキを出してくれた。まだコーヒーの飲めない僕らはコーン茶だったけど

クリームを頬につけてほおばったケーキの味はおいしかった。

「いつか俺もこんなスーツ、着てみたいな」とユンホが言うんで僕は胸をはって

「その時は僕がつくってあげるよ」と誇らしげに言った。

ユンホは目を輝かせて「絶対だぞ、絶対」というと小指を差し出してきた。

僕は指をからめてゆびきりをした。

幼い約束はどうやって守られたんだろう。

ユンホが店に来たのは2回ほどだった。なのに、僕はすっかりそんなことは忘れ

ユノは覚えていたんだ。感動と、ちょっと申し訳ない気持ちになった。

「ごめん、僕、ユノに会ってたんだね。忘れてた。ごめんなさい」

改めて僕は愛おしい恋人を抱きしめた。
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  • あーちゃん
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Re: ❀.(*´▽`*)❀.

> あーたんさま
ふふ、それはどうだったかな。
こっからまたいろいろと展開させていくので
お楽しみに。

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